SHOMI[ショーミー]

関西エンタメスピーカー

チケットプレゼント
メルマガ会員登録

【インタビュー】怒髪天・増子直純/もう“かっこいい”に興味はない。いかにリアルなものをぶつけるか。歌詞はもう全曲怒り!

ツアー「more-AA-janaica TOUR ~もうええじゃないか、もう~」7月14日(水)の東京公演まで全国19都市を巡る

「右手に怒りを、背中に哀愁をたずさえて…。壮年満作 “OSSAN STRIKES BACK”」の触れ込みで2023年3月にニューアルバム『more-AA-janaica』(モウ エエジャナイカ)をリリースした怒髪天。5月からは本作を携えたツアー「more-AA-janaica TOUR ~もうええじゃないか、もう~」に出立、7月14日(水)の東京公演まで全国19都市を巡る。

演歌調のイントロから一転、サビはクレイジーキャッツのようにはっちゃける『令和(狂)哀歌~れいわくれいじぃ~』に始まり、老いてなおシャウト、吠えに吠え、サンタナ風の間奏もぶちあがるザ・怒髪天サウンドの『OUT老GUYS』など、今、言いたいことを言い切った、歌いたいことを歌い切った本作。ボーカルの増子直純に、この“令和の問題作”の全貌を語ってもらった。

 

「この数年欠けてたパズルの最後の1ピースがはまった」

——まず、早いものでツアーも終盤になりましたが、初日から6月18日の郡山公演までの感触や手ごたえはいかがですか。
「一緒に歌う」ということにより、この数年ずっと欠けてたパズルの最後の1ピースがはまって楽曲が完成した感覚があるね。決して忘れていたつもりはなかったんだけど、実際にやってみて、「うわっ!ライブってこんなに凄まじいモノだったんだ!」って、改めて人間対人間の本気の魂のぶつかり合いの熱さを再確認させられて、震えたね。
——7月1日の大阪公演の翌日には同じく大阪umeda TRADで柳家睦&THE RATBONEとの対バンもありますね。
大なり小なりはあれど、それぞれに山あり谷ありの人生を生きてきたイイ大人たちが「楽しくて、グッとキて、笑いながら泣けてきちゃう」。そんな素敵なバンドが今の日本にいくつある⁉ 柳家睦&THE RATBONESはバンドしかやらなかった、いや、バンドしかなかった。そんなバカ野郎どもが最後に見ている大きな大きな夢なんだよ。下ネタ満載のカオス過ぎるライブを観るたびに「生きてるって素晴らしいな」なんつって、大袈裟でなく思えたりするバンドなんてほかに絶対いないよ(笑)

 

「この手の曲をやらせたら絶対負けない」

——『more-AA-janaica』も拝聴いたしました。濃いですね。
濃いよね。いつもに増して濃いよね。作ってみて、アルバムは別に曲数じゃねえなって。このカロリーで10曲要らないなって。エグすぎるという。『如月ニーチェ』とかあのへんも6、7曲だから。実はそのぐらいが一番まとめやすいというか。だからこの前のシングルも入れなかった。なるべく新しいものだけで作ろうと思って。
——1曲目の『令和(狂)哀歌~れいわくれいじぃ~』は最初からインパクトがありますね
ただごとじゃないよね。
——こういう曲で上がってくるというイメージは、増子さんの中でおありだったんですか?
イメージ的にね。(作曲の上原子友康に)落差があるAメロとサビにしてくれって言ってて。スタイル的にはクレイジーキャッツルだけど、さらにもっと落差があるものにって。ただ、想像以上の落差だったよね。
——レコーディングはどうでしたか。
楽しかったね、これは。もう誰も追いつけないところにいると思うよ。その自負はあるね。この手をやらせたら絶対負けない。負けないっていうか相手がいないんだけど(笑)。恐ろしいことにね、誰もいないのよ。
——先ほど、この曲が街で流れていました。
恐ろしいね。頭狂いそうになる。歌詞はもう全曲怒り。この2、3年、やっぱ思うことありまくりだったから。俺は「基本的にはみんなもそう思ってる」と思ってたんだけど、そうじゃなかった部分もあって。
——世間との温度差があり。
そう。バカの巻き添え食らいたくないなっていう。意識高いとか低い以前の問題。本当、そんな知らんやつの悪ふざけに付き合って、こっちまで地獄見るのはまっぴらごめん。今までいろいろやってきて、いろいろ言いたい放題言ったけど、SNSとかでも全然叩かれたこともないし、ラジオで『OUT老GUYS』をかけたにも関わらず、ほぼ反応がない。…これはもう泉谷さん(しげる)枠は確定してしまったんじゃないかっていう(笑)。「また、あのおじさん何か言ってるわ」って。ただ、もう「かっこいい」に興味ないもんな。いかに刺さるかっていうか、リアルなものをぶつけるかっていうことにしか興味がない。
——かっこいいとは何かっていうことを考えることすらも。
ないね。かっこ悪いことはしたくないけど、かっこいいことをしたいわけじゃない。本当、自分たちのやることの精度を上げていくことにしかもう興味ないね。でも、それが面白くてやってるから。歌詞の世界観をいかに曲で表現できるかっていうか。それが一番上にあるから。かっこいいとか、アーティストエゴみたいなものって全く必要ないんだよね。すごいでしょって見せるような感じとか。そういうのは必要ない。
——しなくても自然と出るっていうところなんですかね。
まあ、それは受け取り方だから。解釈がどうであれ、好きに受け取ってくれていいし。ただ、それは開き直りとかではない。諦めでもないし、分かるやつにだけ分かればいいとは思っていない。分かんないやつにこそ、ぶん投げてやると思ってる。
——そこは諦めてはいない。
諦めようがないね。だってもう、(怒髪天の音楽を)聴いてないやつがいっぱいいるんだから。いい加減、聴いてほしい。無反応ってことあるから。もう触れられなくなっちゃったから(笑)。またはザ・ぼんちのおさむちゃんみたいな感じ(笑)。「またやってるわ」っていう。ザ・ぼんちのおさむちゃん枠はまずいよ(笑)。「今日も漫才まで長いね」っていう。正月に(ネタ番組)見たらさ、挨拶だけでだいぶ時間取ってたからね。あれが面白いって本当、素晴らしいよ(笑)。
——あの挨拶だけで一曲やるような感じですよね。
そう、イントロ最高って。すげえんだよなあ。

 

「ピザがすごいちっちゃくなっちゃった!」

——『たからもの』ではベースから入っていて、ああいう曲も最近はあんまりなかったなって新鮮でした。
そうだね。ちょっと遊べるというか、音楽的に面白いことをやろうかって。
——『一択逆転ホームラン』の元気な掛け声もすごくよかったです。
魚河岸じゃないんだからって(笑)。まあ、活気はあった方がいいよね。
——最近の怒りのエピソードはありますか。
あんパンが5個から4個になった。あとはあれだよね。ピザがすごいちっちゃくなっちゃったじゃん。びっくりした。L頼んだのにMかと思った。箱、確認しちゃったもんね。めっちゃちっちゃくなっちゃった。駅弁のね、穴子も3切れがちっちゃくなっちゃって。経済状態がさ、たべものに影響を与えるってのは末期も末期だからね。
——もうピザは大きくならないですかね。
ならないだろね。もう経済は回復しないと思うよ。長年かけてダメにしてきたもんだから。建て直しはないよ。現状維持できるかどうかだよね。ここから間違いなくインフラに手ぇ回らなくなって、日本中の道路がボコボコになるよ。
——どうしたら少しは明るくなると思いますか。
やっぱり根本的にね、政治家がやることだから、そいつらを何とかこう、動かすというかさ、意識持ってもらうしかないじゃない。そのためにはいろんな声が必要だよね、本来。選挙も行かない、文句も言わないで、ただただ従う。それでもまあ、多少ね、経済的にきつくなっても何とか生活していけりゃ何とも思わないんでしょう。そういう人がこれでもありがたいって思ってるわけでしょ。だからこういうことになってんだよね。
——私はもう怒りしかないです。
俺も怒りしかない。ニュース見たら言いたくなるもんね。腹立って、腹立って。
——こんな時代に、音楽の力はどう作用すると思いますか?
まあ、気分だけでも前向きになればさ。そこから行動が生まれるから。気分が暗いと何にしろポジティブな行動にはならない。明るく。だから。どんなに言いたいこと言ってもエンターテイメントだから、バンドは。楽しくユーモアを交えてだよね。

 

「いいメロディ作ってくれたから。生かさないのはもったいない」

——最近改めてつくづく思うんですけど、友康さんの曲が本当に増子さんが歌うために作られてある。ある意味職業・作曲家のような作り方だなと。バンド活動の中で、ハマっていく過程ってあったんですか?
元々そうだね、合わせてくれるっていうか、俺ありきで考えて曲を作ってくれる。俺が歌うことを想定して。ただ。昔はその提案に俺が乗れないことはあったけど。今回で言う『たからもの』みたいな感じの曲はやらなかった。「これ、俺が歌わない方がいいんじゃない?」みたいな。
——それはなんでですか。
ちょっと柔らかすぎるかなみたいな。ただ、やっぱり自分の中にもそういう面があるから、それがやっと表現できる力量がついたかなと思って。ちゃんと歌うっていうことをさ。ある時期、ちゃんと歌うというか、上手だなと思われるように歌うことがすごいダサいと思ってて。だけど、やっていくうちに、友康がちゃんと美しい、いいメロディ作ってんだから、それ生かさないのはもったいないなって。曲に失礼。
——それはどのタイミングですか?
『サンバイザー兄弟』かな。まあ、ちゃんと歌うのもいいもんだなと思って。それまではエモく歌わないと意味ないと思ってた。レコーディングもね。なるべく直さずにって思ってたんだけど、頑張るベクトルが違ったね。その楽曲に添わなきゃだね。その曲の歌詞の世界観をどう表現するかということで、歌う声とか、歌い方は変えなきゃいけない。それが一番曲を最大限に生かす方法だから。ギターがエフェクターで音色変えたり、ベースだと指弾きにするとか、そういうことだよね。
——そういうふうに考え方を変えられてから昔の曲も違いますか。
全然違うよね。この曲この歌い方じゃねえなっていうのはいっぱいあるよね。「ああ~これ違う」って。その頃に戻って教えてやりたいなって思うから。「それ違うぞ」って。
——と言ったとて、おそらく…。
その頃は分かんないよね、理解できないと思う。「いや、そうじゃない」って。ただ、聴けばわかると思う。

 

「あのグルーヴが俺らの音になっている」

——『Go自愛』もライブで聴きたい1曲ですね。
『Go自愛』はね、年取れば取るほど周りがどんどん死んでいっちゃったり、親含め。父ちゃんも2年前に死んじゃってね、病気でね。そこからやっぱり落ち込んだりなんだりして、「あの時ああしてやれば」なんつって。何ができるのかって俺も自分で考えたけど、結局何もできないのよ。「あの時ああすれば」とかも意味ないし、人の分まで絶対生きられない。だったらどうするかっつったら、そのときに好きでいて、愛してくれて、信じてくれた自分のままで生きていく。成長もしなくていいし、退化もしなくていいんだけど、それが一つの勲章というかさ、もらったものを守ればいいんじゃないのかなっていう、一つの俺の提案だね。歌詞はずっと前から考えてはいたんだけど、やっと相反する曲というか。詞先で行ったらね、わりとしめっぽくなる可能性もある。
——友康さんの曲ができた時に、これだったら歌えるかなと。
そうそうそう。友康もこれの方がいいねって。しめっぽくならないように、ザーッと終わる。
——リズム隊のお二人もレコーディングでは色々工夫されて。
そうだね、色々試してみて、坂さん(ドラム・坂詰克彦)に2バスやってくれってずっと言ってたんだけど、全然やってくれなくて。ツインペダルをやっと入手して、1曲使ってんだけど、どの曲でかいっ⁉っていう。『ジャナイWORLD』で使ってて。普通だと絶対『OUT老GUYS』で使うはずなんだけど、こっちかい!って。ただ、ツアーでうまくなってきてて、『OUT老GUYS』でもやってるね。
——それは坂さんが決められるんですか。
坂さんが決めてるね。もちろん友康にも相談してるけど、坂さんがやりたいっていうことで。坂さんはすぐレコーディングで新しいことにチャレンジしようとするから、それを阻止するのが大変だよね。できないことやろうとするから、めちゃくちゃ時間かかるんだよね。ダメだって言って。それで結局、シミ(ベース・清水泰次)に直されてる。
——いまだに私たちが知らない坂さんはまだまだいるってことですよね。ドラムの技としては。
ある。できるようになればね。坂さんは今、自分ができることを最大限やってくれりゃいいんだけど、なぜかできないことをやろうとするんだよな。ただ、そういうところは味が出てくるからね、坂さんの。他のドラマーではあり得ないようなすごい変なフレーズとかあるよ。
——それが怒髪天らしさになっていそうですね。
俺、他のセッションとかさ、他のドラマーで歌うともう、本当びっくりするもん。ちゃんとしてて。やっぱり坂さんと長年一緒にやってるから、うねりが一緒なのよ。気持ちいいところっていうか。坂さんはリズムが後ろに来て、俺は前に行くから、それでちょうどいいバランスとれて、俺らのサウンド、グルーヴになってるんだよね。

 

「音楽的寒暖差でヒートショックが起きる」

——そしてこのアー写ですよね。
FLATBACKER(フラットバッカー)っていう先輩のバンドのオマージュ。俺ら高校の時に、みんなめちゃめちゃ憧れて。すげーかっこいい。その後、すぐデビューして、札幌から東京行っちゃって、東京行ったと思ったらあっという間にKISSのベースのジーン・シモンズのプロデュースで全米デビューしちゃって、アメリカ行っちゃった。で、アメリカで2枚出してもう解散しちゃった。
——何か理由があってオマージュしようと。
『OUT老GUYS』を作った時に、もし俺たちがメタルのバンドで、年取ったらどうなるか、このメイクでやったら面白いんじゃないかって思ったのと、あと、俺らのことを知らない、名前だけ知ってて、「怒髪天なんて名前つけちゃって激しいんでしょう」なんて検索してみたら、「やっぱりこういう感じか」って思うだろうなと思って(笑)。そして1曲目を聞いたら、「全然違う曲入ってんじゃないの⁉」っていう。
——カオスですよね。
頭おかしくなる。音楽的な寒暖差でヒートショックが起きる。心臓が止まるよ。『令和(狂)哀歌』は途中からリオのカーニバルみたいなのがやってくるからね(笑)。異常に調子いい感じの。あれ聴いたとき爆笑したもんな。よく家で(こんな曲)作るな~と思って、友康も。気ぃ狂ってんなと思って。ラッパとかは生じゃない方がいいって、このしょぼい感じになって(笑)。
——怒髪天、全員クレイジーということで。
恐ろしいよ。

 

「何やってんだよと思うソイツがいないと俺が成り立たない」

——ちなみに、今幸せだなと思うことは、何ですか?
幸せだなと思うこと? やっとライブで声出しできるようになること。だって、そうやって育ててきた曲がさ、やっと本来の形に戻るっていう。そのために生きてるからね。それはもう間違いなく幸せだと思う。
——歌うって、なんか、すごくいいですよね。
すごくいいよ。すごい原始的なことだけど、心が一つになると思うんだ。
——ライブもコロナ前のようになりますかね。
今はまだ来れない人もいるだろうし、ただそれとは別にもう来ない人もいると思う。結構な数で。今の生活に慣れちゃうと、まあいいやって。経済的なものもあると思うけど、そこはもう去るものを追わずだとは思う。ただ、「まあいいや」ぐらいのものに思われないように頑張んなきゃなと思って。どう頑張るのか分からないけど、いい曲作って、いいライブやるだけ。
——いい曲を作って、いいライブをするために一番心がけていることは何ですか?
健康と、やっぱりみんな仲良く。違うところで生まれ育ったさ、男4人だからね、それはもう合わない部分もあるし、腹立つ部分もあるけど、バンドを一番自分たちの上に置いて生きてるから。バンドのためだったら何でも我慢するし、何でもできる。なんかこう、それぞれに欠けている部分もあって、そういうことを目の当たりにすると「何やってんだよ」と思うんだけど、そんな「何やってんだよ」と思うソイツがいないと俺が成り立たないっていうことに歯がゆさを感じるというか(笑)。そこも俺のパーツの一つなんだよね。俺の人生でさ、欠けられたら困る。とんでもねえパーツなんだけど。本当、「何してんだよ~」っていうことが多々ある。音楽的なことじゃなくてね、生活のことでね(笑)。

Text by Kazuko IWAMOTO

 

【LIVE】

ツアー「more-AA-janaica TOUR ~もうええじゃないか、もう~」
大阪公演
2023年7月1日(土)大阪umeda TRAD
開場17:00 / 開演17:30 / 終演予定19:30
前売 オールスタンディング ¥5,900(税込/Drink別)
湯仲間直売所/イープラス/チケットぴあ Pコード:234-589/ローソンチケット Lコード:53288
※未就学児童入場不可(小学生以上のご入場される方全てにチケット必要)

「怒髪天 presents 2023 WORLD BAKA CLASSIC 決勝」
2023年7月2日(日)大阪umeda TRAD
怒髪天 / 柳家睦&THE RATBONES
開場15:30 / 開演16:00 / 終演予定18:30
前売 オールスタンディング ¥5,900(税込/Drink別)
※未就学児童入場不可(小学生以上のご入場される方全てにチケット必要)
湯仲間直売所/イープラス/チケットぴあ Pコード:239-683

お問合せ/清水音泉 06-6357-3666(平日12:00~17:00)/ info@shimizuonsen.com

【ALBUM】

【ALBUM】
『more-AA-janaica(モウ エエジャナイカ)』
発売中
初回生産限定盤 TECI-1802 [CD+写真集”DA・SO・KU”]¥6,050(税込)
通常盤TECI-1806 [CDのみ]¥2,750(税込)
発売元:テイチクエンタテインメント/インペリアルレコード


01. 令和(狂)哀歌~れいわくれいじぃ~
02. OUT老GUYS
03. ジャナイWORLD
04. 一択逆転ホームラン
05. たからもの
06. Go自愛

注目キーワードkeyword