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映画『BAD CITY』主演・小沢仁志さんインタビュー。製作総指揮・脚本を担当し、60歳の熱量を込めたアクション大作<前編>

60歳の熱量を込めた、『SCORE』のリベンジ

――『BAD CITY』は近年、日本映画で少なくなってきた本格的なアクションが楽しめるということで、このような作品を待っていた方も多いのではないかと思います。

ありがとう。アクションにこだわっているのは出演者を見れば分かると思うけど、この作品は、アクション映画が好きじゃない人にも、ぜひ見てもらいたい。俺が映画を作る上で気をつけているのは、「このアクションをやりたかったから映画を作ったんでしょ」という感じにしないこと。ストーリーにも入り込めるようにしないと「結局、何がやりたかったの?」ってなるからな。そのあたりは監督の園村健介がアクションだけでなく、会話の間とか繊細な部分も大事にして撮ってくれたから、うまく作れたと思うよ。

 

――今回は「還暦記念作」と銘打たれていますが、還暦の節目で作品を作るという構想は事前に決まっていたのですか?

いや、それは別になかった。ただ、ふと「もう60歳か〜」と思ってさ。俺は1996年に奥山和由さんと『SCORE』って映画を作って、アクション映画界に旋風を巻き起こしたという自負はあるんだけど、興行的にはだめでね。その時の悔しさがずっとあったから、60歳でもう一度、『SCORE』みたいな熱量の高い映画を作れるか確かめる意味でやろうと思ったんだ。キャッチコピーやセリフにも「ケリをつけてやる。」ってあるけど、俺の中では『SCORE』のケリをつけてやるって気持ちなんだよね。それで背負っていた荷物をいったん下ろし、61歳からまた新たな一歩を踏み出そうと。

 

――主演に加え製作総指揮・脚本も担当されていて、全編にわたって小沢さんの魂が込められた作品になっていると思うのですが。

『BAD CITY』は俺だけでなく、俳優、スタッフ、ロケに協力してくれた福岡県も含めた群像劇だと思ってる。すべてが奇跡的に一致団結したからこそ完成できたんだよね。その圧倒的な熱量が作品の中にちゃんと残っている。コンプライアンスやセーフティーの規制もないし、ノースタントでやっているから、数十年はオーバーだけど、数年はこれを越える映画は日本で作れないだろうな。

Ⓒ2022「BAD CITY」製作委員会

 

――製作を始めるにあたってさまざまなやり取りがあったと思うのですが、絶対にゆずれなかったこだわりは?

全体的なノリだね。映画を作るときって、会社の人達はいろいろな方面に配慮するけど、現場の最前線で戦っているのは俺達だからね。だから俺らに対して「安全にお願いします」っていうのもわかるけど、どうせなら「思い切りやってこい!」と言ってくれよって。今回、プレスリリースには「俳優・小沢仁志、最後の無茶。」と書かれているけど、俺はそんなこと言ってないから。これは、たぶん「こんな無茶は最後にしてくださいね」っていう周囲の声なんだろうな(笑)。

 

日本映画界の新たな武器となる個性豊かな出演者

――小沢さんは製作全体に目を配りつつ、いちばん激しいアクションを演じているということで、その様子を見ていたら、他の出演者の方々も自然と熱量が上がってきますよね。

俺の中では、「日本映画の武器となる人材を育てたい」と思いながらながら作ったからね。俺と一緒に特捜班で戦う三元雅芸は日本でアクションやらせたらトップクラスだし、韓国マフィア側の殺し屋・ハン役のTAK∴は、彼の師匠なんだけど、今の日本映画だと、あいつらが顔を出して活躍する場が全然ない。どうしてもアクションの吹き替えやゲームのモーションキャプチャーとか、裏側の仕事が中心になってくるんだけど、あいつらの技術って1ヶ月そこらで覚えられるような代物じゃないからね。だったら、「お前らが芝居を覚えて、どんどん表に出ていこうぜ」って。それで見た人が「この人、誰!? すごく動けるじゃん!」となったら日本映画も変わってくると思うんだ。

Ⓒ2022「BAD CITY」製作委員会

 

――TAK∴さん演じるハンは終始無言なのに加えてとんでもない強さで、劇中でも不気味さが際立っていましたね。

あいつはしゃべるとキャラが崩壊するから、無言がいいって最初から決めてたんだ(笑)。終盤に俺と戦うシーンがあるんだけど、あそこは監督から、「ここは段取りなし、フリーでお願いします」って言われてさ。「え、ナイフ持ってるのに!?」って思ったけど、TAK∴が「兄い、このために俺を呼んだんじゃないんですか?」っていうから、ま、そうだよなって。でもあいつ、動きが速いから付いていくのが大変なんだよ。こっちもだんだんマジになってきて本当に殴りにいってるから(笑)。

Ⓒ2022「BAD CITY」製作委員会

 

――ヒロインである坂ノ上茜さんも屈強なメンバーの中、ハードなアクションを披露されています。

坂ノ上とはオーディションで出会ったんだけど、合格した時に事務所に打ち合わせに行ってさ。マネージャーには、「スタント吹き替え使わないから不安かもしれないけど、撮影後はキリッとした表情のいい女優にして返すから」って言って送り出してもらった。最初は多少アクションができるぐらいで全然だったけど、今回の撮影でかなりの修羅場を経験したからね。クランクアップした頃には見違えるぐらい成長したよ。

 

――本作について群像劇とおっしゃっていましたが、登場人物が全員、本当に魅力的で、それぞれのキャラクターに注目するのも楽しみ方の一つかと思いました。

リリー・フランキーさんやかたせ梨乃さんとかアクションがない役柄の人もいっぱい出てくるんだけど、現場の熱量がすごいから、そういう人たちの存在感もすごく際立つんだよね。梨乃さんは劇中だと威厳を感じさせているけど、本当はすごくチャーミングな人でさ。怖がりだから銃を触るのもびびってたんだけど、側近役の本宮泰風が扱い方を教えたりしていく中で韓国マフィアのマダムとしての雰囲気も高まっていってね。みんながみんな、そんな風に感化されていくと芝居の熱量も上がるんだよ。

 

――リリーさん演じる五条亘は飄々としていながら悪役としての魅力を存分に発揮されていましたね。

リリーさん、最高だよな〜。他のみんながゴリゴリだから、悪のトップまで同じだとつまらないじゃない? 五条みたいなキャラがさ、いやらしい感じでいいんだよ。俺のお気に入りのシーンはラジオ体操なんだけど、リリーさんがやるとこうなるのか〜って。どんどん変な動きになっていくのを監督が気に入って、ずっとカメラ回してたんだけど、最後にはリリーさんが照れて自分で「カット!」って言うまで続いたよ(笑)。緊張感が高い現場の中で、そういう楽しいこともあったから、本当にいい雰囲気の中で撮影できたね。

Ⓒ2022「BAD CITY」製作委員会

<後編に続く>

Text by Takaaki ITO

infomation

2023年1月20日(金)より公開  
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